アプリケーション開発において、**「どのデータベースを選ぶか」**はプロジェクトの安定性と拡張性を左右する重要な判断です。
特に SQLite と PostgreSQL はオープンソースで扱いやすく、Webアプリやモバイルアプリ、SaaS構築など幅広く利用されています。
しかし、軽量なSQLiteと高機能なPostgreSQLでは設計思想が大きく異なります。本記事では、それぞれの特徴と強み・弱みを比較しながら、どんな用途にどちらを選ぶべきかを実践的に解説します。
1. SQLiteとは
SQLiteは、アプリケーションに直接組み込んで利用できる「軽量・サーバーレス型データベース」です。
単一のファイルにすべてのデータを格納するため、インストールやネットワーク設定が不要です。
特徴
- ファイルベース(1ファイルで完結)
- サーバープロセス不要
- ACID準拠のトランザクション処理対応
- 数MBの軽量ライブラリ
メリット
✅ 設定不要で即利用可能
✅ 読み取り処理が非常に高速
✅ ファイルコピーで容易に移行可能
✅ リソース消費が少ない
デメリット
❌ 複数ユーザーによる同時書き込みに弱い
❌ ネットワーク越しのアクセスが困難
❌ 大量データ・高負荷処理には不向き
❌ 複雑なSQL機能に制限あり
2. PostgreSQLとは
PostgreSQLは、エンタープライズ用途でも利用される**高機能なリレーショナルデータベース(RDBMS)**です。
クライアント・サーバー型で動作し、同時アクセスや大規模データ処理に強いのが特徴です。
特徴
- サーバー常駐型のRDBMS
- 豊富なデータ型と関数
- ACID特性とMVCCによる高い整合性
- オープンソースで商用利用可能
メリット
✅ 複雑なクエリやサブクエリに対応
✅ 高いスケーラビリティと安定性
✅ 同時アクセスに強い
✅ JSON・GISなどの非構造データも扱える
✅ 拡張性が高く、プラグインも豊富
デメリット
❌ 初期設定やサーバー構築が必要
❌ メモリ・CPU使用量が多い
❌ 学習コストがやや高い
❌ 管理やバックアップ運用が前提
3. 主な違いと選び方
項目 | SQLite | PostgreSQL |
---|---|---|
データ構造 | 単一ファイル | サーバー型 |
同時接続 | 弱い | 強力 |
速度(読み取り) | 高速 | 高速 |
スケーラビリティ | 低 | 高 |
構築コスト | 低 | 中〜高 |
拡張性 | 限定的 | 高い |
管理性 | 簡易 | 専門知識が必要 |
結論:
- SQLite → 個人アプリ・開発初期・軽量ツール向け
- PostgreSQL → 本番環境・高負荷アプリ・マルチユーザー向け
4. 利用シーン別の使い分け例
SQLiteが適している場面
- 個人・小規模開発:デスクトップアプリやモバイルアプリ
- 試作・テスト環境:簡易DBとしての利用
- オフラインアプリ:ネット接続不要の環境
- データ分析ツール:参照中心のアプリケーション
PostgreSQLが適している場面
- Webシステム・社内ツール:複数ユーザーが同時に利用
- ECサイト・SNS:セッション管理・データ整合性が重要
- 業務システム:大容量データやレポート生成
- 将来的な拡張を見据えた開発:スケール対応が前提
5. パフォーマンス・セキュリティ比較
パフォーマンス比較
項目 | SQLite | PostgreSQL |
---|---|---|
読み取り速度 | ◎ | ○ |
書き込み速度 | ○ | ◎ |
同時接続 | △ | ◎ |
メモリ使用量 | 少 | 多 |
データ容量 | 軽量 | 中〜大規模対応 |
セキュリティ比較
SQLite
- OSファイル権限に依存
- 暗号化は外部ライブラリが必要
- ネットワーク非対応のため攻撃面が限定的
PostgreSQL
- ユーザー認証・権限管理を標準サポート
- SSL/TLS対応
- ログ監査やアクセス制御が可能
6. 学習コストと運用性
SQLite
- 習得が容易、すぐに使える
- SQLの基礎知識のみで十分
- 運用・管理コストが非常に低い
PostgreSQL
- 豊富な機能を理解する必要あり
- サーバー設定やバックアップ運用の知識が必要
- 高度な最適化・拡張が可能
7. まとめと結論
SQLiteとPostgreSQLは、どちらも優れたデータベースですが「規模」「アクセス数」「将来の拡張性」によって最適解は異なります。
SQLiteを選ぶべき場合
- 個人アプリや小規模プロジェクト
- 設定を最小限にしたい
- テスト・プロトタイプ段階の開発
PostgreSQLを選ぶべき場合
- 本格的なWebアプリケーションや業務システム
- 同時アクセスや複雑なクエリを扱う
- 将来的な拡張やクラウド運用を見据えている
最後に
SQLiteは「軽量で手軽」、PostgreSQLは「堅牢で拡張的」。
どちらが優れているかではなく、どんな目的で使うかが選択の鍵です。
個人ツールやモバイル開発ではSQLite、本番環境や商用SaaSではPostgreSQLを採用するのが定石といえるでしょう。
プロジェクトの性質に応じて、最適なデータベースを選択してください。