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AIの声が一晩で別人になった|40話の連作を24話まで作った時点で

かつ

かつ

2026/08/23

つづはじ 第25話のナル|AIの声が一晩で別人になった

AIで全40話の連作アニメーションを作っています。 『はじめましての、つづき』『つづきの、はじめまして』——略して「つづはじ」です。

その音声を、途中まで ElevenLabs で作っていました。24話まで作ったところで、声が別人になりました。 この記事は、そのときの記録です。実際の音源も聴けます。

つづはじ 特設ページ


この記事で分かること

  • ElevenLabs で何ができるのか(4つの機能)
  • 日本語のセリフを作る目的で使ったときの実力
  • ある日突然、声が別人に変わった話とその原因
  • 長期の作品で使うときに気をつけること

結論を先に書きます

日本語の会話が多いものを作るなら、試した中では ElevenLabs が一番使えました。 理由は一つで、「〜ますか?」「〜ませんか」といった疑問形をそのまま自然に読めるからです。他のサービスではここが崩れました。

ただし、こちら側では防げない弱点があります。生成した音声の「版」を固定する手段がありません。 同じ設定で作り直したら声が変わる、ということが実際に起きました。

使うなら、生成した音声を必ず手元に保存しておいてください。 これがこの記事で一番伝えたいことです。


ElevenLabs で何ができるのか

音声合成のサービスです。日本語のセリフを作る目的で使う場合、関係するのは主に4つです。

1. テキストの読み上げ

文章を入力すると音声になります。多言語に対応しています。基本の機能です。

2. ボイスライブラリ

他のユーザーが登録した声を借りて使える仕組みです。11,000種類以上あります。

自分で声を作らなくても、聞いてみて気に入ったものをすぐ使えます。手軽ですが、後述するとおり長期の作品では注意が必要です。

3. Voice Design

文章で説明すると、その通りの声を新しく作ってくれる機能です。

たとえばこう書きます。

21歳の日本人男性。穏やかで押しが強くない。澄んでいて聞き取りやすい声

これで、その説明に沿った声が生成されます。ライブラリから探すのではなく、欲しい声を言葉で指定して作ります。

4. 音声タグ(v3の機能)

読み方を指示できるタグです。セリフの中に書き込みます。

タグ 意味
[murmurs to herself] ひとりごとのように
[flat and even] 淡々と
[quietly] 静かに

タグは英語で書きます。 日本語のセリフに英語のタグを混ぜる形になります。


公式サイト

Free AI Voice Generator & Voice Agents Platform | ElevenLabsCreate lifelike speech with our AI voice generator and voice agents platform. Access 5,000...elevenlabs.io

何に使ったか

生成AIで長編アニメーションを作っています。全40話ぶんのセリフを、このサービスで生成しました。

  • プラン:Creator(月$22、121,000クレジット)
  • モデル:eleven_v3
  • 1話あたりのセリフ:10〜20本、300〜500文字程度

短い動画を1本作るのとは条件が違います。何ヶ月にもわたって同じ声を出し続けられるかが問われる使い方です。


良かった点

日本語の疑問形が自然に読める

これが採用した一番の理由です。

「〜ますか?」「〜ませんか」がそのまま通ります。抑揚が崩れません。他のサービスではここが崩れて、セリフを平叙文に書き換えるしかない場面がありました。会話が多いものを作る場合、これは代えがきかない差でした。

音声タグでの演技指示がよく効く

[murmurs to herself] を付けると、実際に独り言らしい読み方に変わります。[flat and even] を付ければ淡々とした読みになります。指定によって読み方が明確に変わるのが分かります。

タグを付けるとテンポも自然になります。この効果については後述します。

Voice Design で作った声は権利の問題が起きにくい

Voice Design で生成した声は、誰の声でもない合成音です。 実在の人物の声を複製する場合に生じるような、第三者の権利の問題が発生しません。

長く使う作品の声としては、この点は重要でした。

有料プランで生成した音声は商用利用できる

有料プランで生成した音声は商用利用でき、帰属表示(クレジット表記)も不要です。

解約後の扱いには区別があります。契約していた期間に生成した音声の商用利用権は、解約後も残ります。 ただし解約後に新しく生成したものは無料プランの条件に戻ります(商用利用不可、帰属表示が必要)。

「一度契約すれば以後ずっと自由に作れる」ではなく、「契約中に作ったものは以後ずっと自由に使える」です。ここを取り違えると困ることになります。


悪かった点

ここがこの記事の本題です。

ある日突然、声が変わった

ボイスライブラリの声を使って24話まで作りました。 ところが、同じ設定・同じ文章で作り直したら、声の高さが 208Hz から 222〜240Hz に変わり、別人に聞こえるようになりました。

条件はこうです。

項目 状態
声ID 同じ
モデル 同じ
設定 同じ
テキスト 1文字も違わない
日付 違う

違うのは日付だけです。こちらの操作は何も変えていません。

実際に聴き比べてください

つづはじ第25話の、同じセリフです。

8月13日に作ったもの

8月14日に作ったもの

同じ人の声には聞こえないと思います。

原因はサポートに問い合わせて分かった

自分では原因が分からなかったので、サポートに問い合わせました。返ってきた説明はこうです。

eleven_v3 は、ボイスライブラリのプロ音声(PVC)を完全にはサポートしておらず、内部的により簡易な方式(IVC)にフォールバックする。そのためモデルが更新されると出力が変わる。

そして重要なのが次の点です。

バージョンを固定する方法は提供されていません。 旧版を指定する手段がないので、こちら側で防ぐことができません。「前と同じ版で作り直す」ができないということです。

これは設定ミスでも使い方の問題でもなく、仕組み上そうなっているということでした。

連作だと、何を失うのか

単発の動画なら、作り直せば済みます。40話の連作だと話が違いました。

  • 第1話から第24話までは、旧い声で完成している
  • そこから先は、新しい声しか作れない
  • 途中で主役の声が変わる作品になる

しかも、公開したあとで気づいたらもっと悪い。 第30話まで出した時点で 「1話の声で追加カットを作りたい」と思っても、もう作れません。

作った24話ぶんは、全部作り直しになりました。

ボイスライブラリの声には「引き上げ予告」がある

もう一つ、借り物の声には期限の問題があります。

ボイスライブラリの声には、提供者が公開を取り下げるまでの猶予期間が設定されています。たとえば730日といった形です。期間が過ぎれば、その声は使えなくなります。

借り物の声は、期限のある資産だと考えたほうがいいです。40話のような長期のものを作る場合、途中で使えなくなる可能性を織り込んでおく必要があります。

この2つから、ライブラリの声ではなく Voice Design で自分のオリジナルを作るほうが安全という結論になりました。オリジナルなら引き上げられることはありません。

ただし、版を固定できない弱点はオリジナルでも残ります。 ここは解決できませんでした。

クレジットの消費が速い

Creator プランは月に121,000クレジットです。

声を探して設計を繰り返した日に、121,000クレジットを1日で使い切りました。 月ぶんが1日で消えました。

声が確定してからの通常運用なら、1話300〜500文字ぶんで足ります。問題は試行錯誤の期間です。声を試しては作り直し、設計を変えてまた試す。この期間だけ、消費が桁違いになります。

声を確定させてから本番を回す。 これを守るだけで費用がまったく違ってきます。


向く人/向かない人

向いています

  • 日本語の会話が多いものを作る人。疑問形を自然に読めるのは大きな利点です
  • キャラクターに固有の声が必要な人。Voice Design でオリジナルを作れます
  • 演技の指示を細かく付けたい人。音声タグがよく効きます

向いていないかもしれません

  • 何年も先まで、まったく同じ音声を再現し続ける必要がある人。版を固定できません
  • 費用を完全に固定したい人。試行錯誤の期間は消費が読めません

これから使う人へ

  1. 生成した音声は必ず保存してください。 サービス側の更新で同じ声が作れなくなることがあります。実際に起きました。保存しておけば、別のサービスで作り直すときの手本になります
  2. 長期のものを作るなら、ボイスライブラリではなく Voice Design を使ってください。 借りた声には引き上げまでの猶予期間があります。オリジナルなら引き上げられることはありません
  3. 声を確定させてから本番を回してください。 声を探している期間は、月ぶんのクレジットが1日で消えることがあります
  4. 音声タグは英語で書きます。 日本語のセリフに英語のタグを混ぜる形です。最初は違和感がありますが、効果ははっきり出ます
  5. 商用利用の条件を確認してください。 有料プランで生成したものは解約後も商用利用できますが、解約後に新しく生成したものは無料プランの条件に戻ります

まとめ

日本語の会話が多いものを作るなら、ElevenLabs は現時点で現実的な選択肢でした。 疑問形が自然に読めること、演技の指示が効くこと、オリジナルの声を作れること。この3つが揃っているサービスは他に見つかりませんでした。

一方で、同じ設定で作り直しても同じ音声が出るとは限りません。 版を固定する手段がないので、これは使う側では防げません。

だからこそ、生成した音声そのものを保存しておくことが対策になります。 これだけは必ずやってください。

他のサービスとの比較は別の記事にまとめています。費用や商用利用の条件をサービスごとに並べているので、選ぶ段階の方はそちらも見てみてください。

この検証は、現在制作中の長編AIアニメーションの制作過程で行っています。作品の公開が始まったら、この記事からもお知らせします。



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いま、つづはじの声はどうしているか

声を作る道具と、読ませる道具を分けました。

オリジナルの声を作る Qwen3-TTS
本番のセリフを読ませる Irodori-TTS

どちらも手元で動くので、モデルの重みごと自分で持っています。 提供元の都合で声が変わることはありません。

★ 演技は ElevenLabs のほうが良かったかもしれません。それでも戻しません。 半年後に同じ声が作れることのほうが、連作にとっては大事だと分かったからです。

これから長い作品を作る人へ

生成AIの道具は、出来のよさで選びたくなります。 私もそうでした。

でも長い作品を作るなら、先に「これは半年後も同じものが出せるか」を確かめてください。 具体的には、この2つです。

  • 同じ入力で、日をまたいで2回作って、聴き比べる(1日で分かります)
  • モデルの版を指定できるか、規約とドキュメントを読む

私はこれをやらずに24話まで進みました。1日で済んだ確認を、24話ぶんの作り直しで払いました。


つづはじについて

全40話、2026年9月1日から毎日1話ずつ公開しています。 作り方・かかった費用(約122,800円)・失敗したことは、特設ページに全部書いています。

つづはじ 特設ページ

この記事の著者・監修

カツ
生成AIエンジニア/フロントエンドエンジニア/舞台監督などなど

カツ

カツプロ運営者のカツです! AI・Web関連から、日常のことなど、私目線の回答も交えながらお伝えします!

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