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AI・生成AI使ってみた 2026年8月23日

音声AI 5種を比較|アニメ制作で分かった費用と権利

かつ

かつ

2026/08/23

「音声AI 5種を比較 費用・商用利用・著作権 40話のアニメで検証」と書かれたアイキャッチ画像

この記事で分かること

  • 主要な音声AI 5つを、日本語のセリフを作る目的で比べた結果
  • 実際にかかった費用(プラン、クレジットの減り方、1話あたりの実額)
  • 商用利用と権利の条件が、サービスごとにどう違うか
  • 途中で起きた問題と、その原因

結論を先に書きます

会話の多い作品を日本語で作るなら、今のところ ElevenLabs が一番現実的でした。 日本語の疑問形をそのまま読めるサービスが、試した中では他になかったからです。

ただし ElevenLabs にも大きな弱点があります。生成した音声の「版」を固定する手段がありません。 実際に、同じ設定・同じ文章で作り直したら声が別人に変わりました。

無料で使えるローカルの音声AIも、Microsoft の Azure Speech も、Google の Gemini も、それぞれ向く用途があります。「どれが一番いいか」ではなく「何を作るか」で決まる、というのが試した範囲での結論です。


何を作っていたか

生成AIで長編アニメーションを制作しています。全40話、1話あたりのセリフは10〜20本、文字数にして300〜500文字ほど。この分量を何ヶ月も本番で回しました。

短い動画を1本作るのとは条件が違います。同じ声を、何ヶ月にもわたって同じ品質で出し続けられるかが問われます。この記事に書くことは、その条件で試した結果です。


5つの比較表

日本語の疑問形 声を自作できるか 費用 商用利用 向く用途
ElevenLabs 自然に読める できる(Voice Design) 月$22(Creator) 有料プランなら可 会話の多い作品
Gemini TTS 崩れる できない(プリセットのみ) 12話ぶんで約3,750円 独白・ナレーション
Azure Speech Geminiより崩れにくい 実質できない(審査が必要) 安い 業務アナウンス、読み上げ
ローカル(AivisSpeech等) 素直 できない(配布モデルから選ぶ) 無料 モデルによる 社内用、下書き
組み合わせ(読み方と声を別サービス) 読み方は良い 2社ぶん 両方の条件を満たす必要 推奨しない

以下、それぞれ詳しく書きます。


費用は実際いくらかかったか

ElevenLabs

Creator プラン、月$22。月に121,000クレジットが付きます。

声が決まってからの通常運用なら、1話300〜500文字ぶんの生成で十分足ります。問題は声を探している期間です。声を試しては作り直し、設計を変えてまた試す。これを繰り返した日に、121,000クレジットを1日で使い切りました。

月ぶんのクレジットが1日で消えます。これは想定しておいたほうがいいです。

Gemini TTS

第1〜12話ぶんを作って約3,750円でした。1話あたり300円ほどの計算になります。安いです。

Azure Speech

安価です。実測の総額は出していないので金額は書きませんが、費用が理由で外したことは一度もありませんでした。

ローカル(AivisSpeech / Style-Bert-VITS2)

完全に無料で、回数制限もありません。 自分のPCで動くので、何回作り直しても費用は増えません。


商用利用と権利:ここが一番間違えやすい

サービスごとに条件がはっきり違います。契約する前に必ず確認してください。

ElevenLabs

有料プランで生成した音声は商用利用できます。帰属表示(クレジット表記)も不要です。

重要なのは解約したあとの扱いです。契約していた期間に生成した音声の商用利用権は、解約後も残ります。 ただし、解約後に新しく生成したものは無料プランの条件に戻ります(商用利用不可、帰属表示が必要)。「一度契約すれば以後ずっと自由」ではなく、「契約中に作ったものは以後ずっと自由」です。

もう一点。ElevenLabs には文章で声を設計する Voice Design という機能があります。「21歳の日本人男性。穏やかで押しが強くない。澄んでいて聞き取りやすい声」のように書くと、その通りの声が新しく作られます。これは誰の声でもない合成音なので、実在の人物の声を複製する場合に生じる第三者の権利の問題が発生しません。

一方、他のユーザーが登録した声を借りるボイスライブラリ(11,000種類以上)には別の注意があります。後述します。

Gemini TTS

Gemini API の利用規約上、生成物の所有権を Google は主張せず、商用利用できます。 ただし法令を守る責任は利用者側にあると明記されています。

使える声は Google が用意した合成音のプリセットで、特定の実在人物の声を複製したものではありません。

ローカルの音声AI:ここが一番の落とし穴

ライセンスがモデルごとにバラバラです。

配布されている音声モデルの中に、ACML-NC(非商用)のものが混ざっています。 実際、声としては候補になったモデルが、ライセンスを確認したら非商用で、使えませんでした。

無料で回数制限もないので気軽に試せますが、良い声を見つけてから使えないと分かるのが一番つらい流れです。試す前にライセンスを見てください。


サービスごとに起きた問題

ElevenLabs:ある日突然、声が変わった

ボイスライブラリの声を使って24話まで作りました。ところが、同じ設定・同じ文章で作り直したら、声の高さが 208Hz から 222〜240Hz に変わり、別人に聞こえるようになりました。

同じ声ID、同じモデル、同じ設定、1文字も違わないテキスト。違うのは日付だけです。

サポートに問い合わせて原因が分かりました。使っていた eleven_v3 は、ボイスライブラリのプロ音声(PVC)を完全にはサポートしておらず、内部的により簡易な方式(IVC)にフォールバックするとのことでした。そのためモデルが更新されると出力が変わります。

そして、バージョンを固定する方法は提供されていません。 旧版を指定する手段がないので、こちら側で防ぐことができません。

もう一つ、ボイスライブラリには引き上げ予告があります。借りている声には、提供者が公開を取り下げるまでの猶予期間(例:730日)が設定されています。借り物の声は、期限のある資産だと考えたほうがいいです。

この2つから、ライブラリの声ではなく Voice Design で自分のオリジナルを作るほうが安全という結論になりました。それでも「版を固定できない」弱点は残ります。

Gemini:日本語の疑問形が読めなかった

これがこの記事で一番伝えたい実測結果です。

「〜ますか?」「〜ませんか」の抑揚が崩れます。 男性プリセット16種類すべてで同じでした。さらに、日本語専用の Google Cloud TTS でも同じでした。

結果として、セリフを平叙文に書き換えるしか手がありませんでした。 会話の多い作品ではこれは致命的です。

もう一点、同じ設定・同じ文章でも作るたびに声がぶれます。 別人のように聞こえることがあり、話をまたいで声をそろえるのが難しくなりました。

良かった点もはっきりあります。演技の指示がよく効きます。「独白」「明るくしない」「語尾を上げない」といった指示に素直に反応します。使った声は女性役が Leda、男性役が Fenrir(当初 Charon を使いましたが年上に聞こえたので変更しました)。プリセットの種類が多く、比較して選べるのは利点でした。

本番で使うなら Vertex AI 経由にしてください。AI Studio の無料枠は入力が学習に使われることがあります。Vertex AI 経由なら同じモデル・同じ声で回数上限がありません。準備は、Vertex AI API(aiplatform.googleapis.com)を有効化し、サービスアカウントに「Agent Platform ユーザー」(旧 Vertex AI User)の権限を付けるだけです。

なお AI Studio のキーで使う場合、1日の回数制限はプロジェクト単位です。キーを2本(別プロジェクト)用意すれば回避できますが、運用が煩雑になります。

Azure Speech:数値で指定できるが、声を作れない

SSML で読み方を数値で細かく指定できます。 「高さ -8%」「速さ 0.92」といった書き方ができ、スタイルの指定もできます。数値なので再現性があります。 キーはリージョン単位(japaneast など)で発行します。

日本語の疑問形は Gemini より崩れにくかったです。安価でもあります。

不採用にした理由は一つだけで、オリジナルの声を作れないことでした。用意されたプリセットに合う声がなければ、それ以上どうにもなりません。自分の声を作る Custom Neural Voice という機能はありますが、実際の人の録音データと審査が必要で、個人の作品づくりには重すぎました。

声にこだわらない用途、たとえば業務アナウンスや読み上げ、ナレーションであれば十分に使えると思います。

ローカルの音声AI:滑舌が決定打だった

AivisSpeech は自分のPCで動く日本語音声合成エンジンです(127.0.0.1:10101 で待ち受けます)。配布されている音声モデルを選んで使います。Style-Bert-VITS2 系のモデルが多数配布されています。

利点は大きいです。完全無料、回数制限なし、ネットに送信しない。 そしてモデルを手元に置けるので、提供元の都合で消えません。 ElevenLabs で声が変わった経験のあとでは、この「消えない」は本当に価値があります。日本語専用に作られているので、疑問形の抑揚も素直でした。

不採用の決め手は滑舌でした。長いセリフになるほど聞き取りづらくなります。短い読み上げなら問題なくても、長尺のセリフが続く作品では厳しかったです。

もう一つ、モデルの説明と実際の声が食い違うことがあります。 説明に「少年」と書かれているモデルが、聞いてみると想定と違う、ということが複数回ありました。試聴してから決めてください。

組み合わせ:弱点も両方引き継ぐ

Gemini は演技の指示が効くが声がぶれる。ElevenLabs は声が安定するが読み方の指示が弱い。そこで、Gemini に演技をつけて読ませ、ElevenLabs の音声変換で声だけ差し替えるという二段構えを本番で運用しました。

読み方の良さと声の良さは両立できました。実際に一時期はこれを本番構成にしていました。

それでも最終的にやめました。理由は3つです。

  1. 変換した音だと分かります。 加工を挟むほど、そういう質感が出ます
  2. 工程が2倍になります。 片方のサービスが変われば全部作り直しです
  3. 音声変換は元の音声の細かい「間」を広げます(実測で確認しました)。秒単位の尺が合わなくなり、動画と合わせる工程に影響しました

複数のサービスをつなぐと、良いところだけでなく弱点も両方引き継ぐ、というのが実感です。最終的に ElevenLabs 単体に統一しました。


「片言に聞こえる」の原因は、声ではないことが多い

音声AIで一番よく出る不満が「片言に聞こえる」「AIっぽい」です。40話ぶん作る中で原因を切り分けたので、簡単に書いておきます。

原因1:後から引き伸ばしていた。 早口すぎる音声を後から引き伸ばして速度をそろえていました。これが「AIっぽさ」の正体でした。演技のタグを付けると引き伸ばさなくても自然な速さで読むと分かり、引き伸ばしをやめました。「遅すぎる」という不満と「AIっぽい」という不満が、同じ原因でした。

原因2:安定度の設定。 stability を上げると読みは安定しますが、抑揚が消えて片言になります。0.75 で片言、0.55 まで下げると今度は締まりがなくなりました。役によって適正値が違います。 独り言中心の役と、人に話しかける役では変えたほうがいいです。

原因3:質問文を平らにしていた。 語尾が上がったら不合格、という自動チェックを全セリフに当てていました。しかし日本語の質問は語尾が上がるのが正しい。 ルールのほうが間違っていました。

原因4:読みの間違い。 音の長さは正常なのに、まったく別の語に読まれていることがありました。文字数も拍数も合っているのでチェックを素通りします。実際に聞き取って台本と比べるしかありません。

片言かどうかは数字でも測れます。音声の高さの並びを取り、その**ばらつき(標準偏差)**を見ます。ばらつきが小さい=平坦=片言に聞こえる、という関係です。実際に4案を測って一番ばらつきの大きいものを選んだら、耳で選んだ結果と一致しました。


用途別の選び方

  • 会話の多い作品:ElevenLabs。疑問形が読めるサービスが他にありませんでした
  • 独白・ナレーション中心:Gemini TTS で十分です。疑問形が出ないので崩れません。しかも安いです
  • 業務アナウンス、読み上げ:Azure Speech。数値で指定でき、再現性があります
  • 社内用、下書き、費用をかけたくない読み上げ:ローカルの音声AI。無料で回数制限もありません
  • 作品として世に出す長尺のセリフ:ローカルは避けたほうがいいです。滑舌の問題が出ます

これから使う人へ

  1. 生成した音声は必ず保存しておいてください。 サービス側の更新で、同じ声が二度と作れなくなることがあります。実際に起きました。保存しておけば、別のサービスで作り直すときの手本になります
  2. 他人が登録した声(ボイスライブラリ)は、期限のある借り物だと考えてください。 提供者が取り下げる猶予期間が設定されています。長期の作品なら、自分で設計した声を使うほうが安全です
  3. 声を探す期間は費用が跳ね上がります。 月ぶんのクレジットが1日で消えることがあります。声を確定させてから本番を回してください
  4. 商用利用の条件はプランごとに違います。 無料枠は商用不可のサービスもあります。ローカルのモデルは1つずつライセンスが違います。契約前・利用前に必ず確認してください
  5. 「AIっぽい」と感じたら、まず後処理を疑ってください。 声そのものではなく、引き伸ばしや設定が原因のことが多いです

まとめ

日本語のセリフを作る目的で5つを比べた結果、会話の多い作品では ElevenLabs が現実的な選択肢でした。 疑問形をそのまま読めるかどうかで差がつきます。

ただしどのサービスにも、こちら側では防げない弱点があります。 ElevenLabs は版を固定できません。Gemini は疑問形が崩れます。Azure は声を作れません。ローカルは滑舌とライセンスの問題があります。

完璧なものを探すより、自分の用途で許容できない弱点はどれかを先に決めるほうが早い、というのが40話ぶん作って分かったことです。そして、生成したものは必ず手元に保存しておいてください。 これだけは、どのサービスを選んでも共通です。

この検証は、現在制作中の長編AIアニメーションの制作過程で行っています。作品の公開が始まったら、この記事からもお知らせします。



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この記事の著者・監修

カツ
生成AIエンジニア/フロントエンドエンジニア/舞台監督などなど

カツ

カツプロ運営者のカツです! AI・Web関連から、日常のことなど、私目線の回答も交えながらお伝えします!

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