AI検索に引用されても収益は0円|26万回の実測と、支払いが始まった仕組み
かつ
2026/09/10
私が運営している3つのサイトは、2026年3月8日から9月5日までの182日間で、マイクロソフトのAI(Copilot)に合計264,265回引用されていました。そこから来たクリックは、ほぼゼロです。なかでも、運営している雑記メディアの1つは21,005回引用されて、クリックは0件でした。
Bing Webmaster Tools の管理画面から、自分で書き出した数字です。
これを見たとき、正直に言うと「記事を書く意味はもう無いのかもしれない」と思いました。2万回使われて、一人も来ていないのですから。
ただ、そのあとで海外の一次資料を追いかけてみたら、引用されたぶんをお金で払う仕組みが、2026年に実際に動き出していました。まだ個人には回ってきません。それでも、方向としては希望があると考えています。この記事は、その調べものの報告です。
半年で264,265回引用されて、クリックはほぼゼロだった
先に、自分の数字を全部出します。3サイトすべてで Bing Webmaster Tools の「AI Performance」を見られる状態にしてあります。無料で誰でも使えます。
| サイト | 6か月の引用回数 | 引用のあったページ | 引用何回で1クリックか |
|---|---|---|---|
| チアセブンアーチ(動物・自然メディア) | 232,549 | 325本 | 91回 |
| 雑記メディア(別に運営) | 21,005 | 66本 | 24回 |
| カツプロ(このサイト) | 10,711 | 83本 | 11回 |
出どころ:Bing Webmaster Tools「AI Performance」のページ別データ(2026年9月8日に書き出し)。クリック数は同ツールの通常検索データです。
いちばん引用されているチアセブンアーチで、91回引用されて、ようやく1回クリックされる計算になります。
しかも引用は一極集中していました。この雑記メディアでは上位5本だけで全体の82%。1位の記事1本で、サイト全体の引用の半分です。公開している234本のうち、6か月で1回でも引用されたのは66本(28%)だけでした。
つまり、私が手元のデータから言えるのはこの2つです。「たくさん書けば引用される」わけではないし、「引用されればクリックされる」わけでもない。
「使われている」と「読まれている」が、切り離された
ブログやオウンドメディアの収益は、ずっと「人が来ること」を前提に組み立てられてきました。広告もアフィリエイトも、来た人の数で決まります。だから流入が減れば、書く意味がなくなったように感じます。
| これまで | いま | |
|---|---|---|
| 流れ | 検索 → 訪問 | AI → 回答 |
| 読み手 | 人 | AI |
| 結果 | 読まれる=来る | 使われる。でも来ない |
| 記録 | アクセス数として残る | どこにも計上されない |
いま起きているのは「読まれなくなった」ではなく、「読まれてはいるが、読んでいるのが人ではなくAIになった」という変化です。私の264,265回は、誰かの役に立っている可能性が高い。ただ、その事実がどこにも記録されず、1円にもなっていません。
そして、ここからが本題です。「使われたぶんを払う」という仕組みが、2026年に入って実際に立ち上がりました。
使われたぶんを払う仕組みが、2026年に動き出した
ここから書く内容は、すべて発表した会社・団体の公式ページに載っているものだけです。SEO業者の予測や、個人の検証は入れていません。
① マイクロソフト:Copilotが記事を根拠に使ったら払う
マイクロソフトは2026年2月3日、Publisher Content Marketplace という仕組みを公式ブログで発表しました。書き手が自分のコンテンツに条件と値段をつけて出し、Copilotなどが回答の根拠に使ったときに支払われる、という設計です。
公式の言葉では、「publishers will be paid on delivered value(届けられた価値に対して支払われる)」。取りに来た回数ではなく、実際に使われたかどうかで払う、という考え方です。
共同で設計したパイロット参加社として、AP通信、Business Insider、Condé Nast、Hearst Magazines、People Inc、USA TODAY、Vox Media の7社が名前を出しています。
② Perplexity:購読料を「引用」と「エージェントの利用」で分ける
AI検索の Perplexity は、Comet Plus という月5ドルの購読を用意しました。公式ブログには、その収益を、計算コストぶんを除いて参加パブリッシャーに分配すると書かれています。
面白いのは分け方です。公式が挙げているのは次の3つで、「回答のなかで引用されたこと」が、そのまま分配の対象になっている点が新しいところです。
- human visits(人がサイトを訪れた)
- search citations(検索の回答で引用された)
- agent actions(AIエージェントが使った)
③ Cloudflare:「クロール回数は、価値の粗い指標だ」
サイトの手前に置く通り道の会社 Cloudflare は、AIが取りに来るたびに課金する仕組み(Pay Per Crawl)を、使われたときに課金する仕組み(Pay Per Use)へ切り替えると公式ブログで説明しています。その理由の説明が、いちばん的確だと思いました。
クロールは価値の粗い指標だ。1ページが1回クロールされただけで何千もの回答に引用されることもあれば、何度もクロールされて一度も使われないこともある。
― Cloudflare 公式ブログ「Making AI search smarter」より(筆者訳)
提携先として公式に名前が出ているのは Ceramic.ai と You.com の2社です。Ceramic.ai については「参加した書き手は、自分のコンテンツが Ceramic の検索結果に出たときに支払いを受けられる」と説明されています。
あわせて Cloudflare は、2026年7月1日のプレスリリースで2026年9月15日から既定の設定を変えると発表しました。新規のサイトと、設定を変えていない無料プランの利用者について、広告のあるページでは検索は許可、学習とエージェント利用はブロックになります。用途を選ばせない「混ざったクローラー」は、広告のある全ページでブロックされます。
④ RSL:robots.txt に「利用条件」を書ける標準ができた
ここまでの3つは、特定の会社のサービスです。それとは別に、どのサーバーでも使える公開標準が2025年9月10日に発足しました。RSL(Really Simple Licensing) といいます。RSSの後継として設計されたもので、robots.txt に1行足して、利用条件を書いたファイルを置くだけです。
公式が定めている支払いの型は5つ。最後の2つが、この記事の主題そのものです。
| 型 | 意味 |
|---|---|
| free | 自由に使ってよい |
| attribution | 名前とリンクを出すことを条件に使ってよい |
| subscription | 購読契約をした相手に使わせる |
| pay-per-crawl | 取りに来るたびに払う |
| pay-per-inference | AIが回答を作るのに使うたびに払う |
出どころ:RSL 公式プレスリリース(2025年9月10日)
発足時に賛同を表明した会社として公式が挙げているのは、Reddit、Yahoo、Medium、People Inc.、Internet Brands、Ziff Davis、Fastly、Quora、O'Reilly Media、wikiHow、The Daily Beast、Miso.AI、Raptive、Ranker、Evolve Media です。
私は2026年9月8日に、運営している4サイトすべてにこのRSLを入れました。費用ゼロ、審査なし、サーバーの引っ越しも不要です。robots.txt に1行と、条件を書いたXMLを1つ置くだけで終わります。
正直に書きます。いま個人には回ってきません
期待だけ煽ると嘘になるので、調べて分かった悪い話も書きます。
RSL Collective が公式サイトに載せている「ライセンスパートナー」は、Fastly、Supertab、MonetizationOS、WordPress の4つだけです。4つとも書き手を支える側のインフラ会社で、お金を払う側のAI企業は、1社も載っていません(2026年9月10日時点)。
規格を作って賛同したのは、もらう側ばかりです。払う側が、まだ乗っていない。ここが現状のいちばん弱いところだと思います。
| 仕組み | 何に払うか | いま個人が入れるか |
|---|---|---|
| マイクロソフト Publisher Content Marketplace | Copilotが根拠に使ったぶん | × パイロット7社のみ |
| Perplexity Comet Plus | 訪問・引用・エージェント利用 | × パートナー契約 |
| Cloudflare Pay Per Use | AIの回答に使われたぶん | △ ベータ。払う側のAIは2社のみ |
| RSL(公開標準) | 条件を宣言するだけ | ○ 無料・審査なし。ただし払う相手がいない |
RSLだけは今日から入れられます。でも、入れても今日は1円も入りません。「支払いが始まったときに、先に宣言してある側になる」だけです。私が4サイトに入れたのも、その理由です。
それでも希望だと思う、3つの理由
① 「取りに来た回数」から「使われた価値」へ、言葉が変わった
1年前まで、この話は「勝手に学習に使うな」という、止める話でした。いまは違います。マイクロソフトは「delivered value(届けられた価値)」と言い、Cloudflare は「クロール回数は価値の粗い指標だ」と言っています。
この言葉が、止めさせたい側ではなく、払う側の会社から出てきたことが大きいと考えています。止めさせるのと、値段をつけるのは別の段階です。いまは後者に入りました。
② 「小さい書き手をまとめる」が、最初から設計に入っている
個人が単独でAI企業と交渉するのは、現実的ではありません。だからRSL Collective は、音楽の著作権管理団体と同じ形を目指すと公式に書いています。ばらばらの権利をまとめて、規模にかかわらず交渉できるようにする、という設計です。
独立した書き手と作り手こそが、オープンなウェブの中心にある。
― RSL 公式プレスリリース(賛同企業のコメント)より・筆者訳
実現するかは分かりません。ただ、「大手だけの話にしない」と明文で書いてある仕組みが存在すること自体は、去年までなかったことです。
③ 日本でも、制度の言葉に「対価還元」が入った
海外だけの話ではありません。日本新聞協会は2025年12月23日、内閣府に意見書を出しています。求めている中身が、そのままこの記事の論点です。
- 機械可読なオプトアウト(robots.txt など)の尊重を、法的義務にすること。いまの著作権法は、検索サービスの収集についてはオプトアウトの尊重を定めていますが、AI学習については明文化されていません
- 学習データだけでなく、RAG(検索拡張生成)で参照される「知識データ」も透明性の対象にすること。まさに「引用」の部分です
- 透明性を確保することで、ライセンスによる対価還元の機会を得られるようにすること
政府の「知的財産推進計画2026」は2026年6月12日に決定されました。「拒否できる」が義務になれば、次に来るのは「では、許可の対価はいくらか」の話です。私は、市場が動くより先に法律が動く可能性のほうが高いと見ています。
いま、個人でもできること
お金にはなりません。それでも、実際にやってみて「やっておいてよかった」と思ったことを3つ書きます。全部無料です。
1. 自分が何回引用されているかを、まず見る
Bing Webmaster Tools の「AI Performance」で見られます。無料です。マイクロソフトのCopilotに、自分のどの記事が何回使われたかが、ページ単位で分かります。
私はこれを見るまで、自分のサイトが26万回使われていることを知りませんでした。「集客にならない」と「使われていない」は、まったく別のことです。まず、そこを分けて見たほうがいいと思います。
2. 利用条件を、機械が読める形で宣言しておく
RSLです。robots.txt に License: https://(自分のドメイン)/license.xml の1行を足し、条件を書いたXMLを置くだけ。審査もサーバー変更もありません。
私は「検索とAIの回答での利用は許可。ただし名前と動くリンクを出すこと。学習利用は個別に相談」という内容にしました。引用は止めたくないのです。困っているのは引用されることではなく、引用されても名前が出ないことなので。
3. AIのクローラーを、用途で分けて考える
主要なAI企業は、公式ドキュメントでクローラーを用途別に分けています。robots.txt で個別に指定できます。
| 会社 | 学習用 | 検索表示用 | 質問されたときの取得 |
|---|---|---|---|
| OpenAI | GPTBot | OAI-SearchBot | ChatGPT-User |
| Anthropic | ClaudeBot | Claude-SearchBot | Claude-User |
出どころ:各社の公式クローラードキュメント
「学習は断るが、検索での表示は許可する」を分けて指定できます。全部まとめてブロックすると、AI検索から自分が消えます。いまの状況では、それは損だと考えています。
「書く意味がない」ではなく、「まだ払われていない」
264,265回引用されてクリックはほぼゼロ、という数字を見たときの最初の感想は「終わったな」でした。
調べ終わったいまは、少し変わっています。264,265回は、失われた回数ではなく、まだ値段のついていない回数だったと思うようになりました。値段をつけようとしている会社が、2026年に4つ出てきた。日本の制度も、その言葉を使い始めた。
もちろん、実際に個人に回ってくる保証はありません。大手だけで終わる可能性は十分あります。それでも、「使われた回数を数える」という発想が生まれた以上、数えられる側にいたほうがいい。私がRSLを入れたのは、そういう理由です。10分で終わって、あとは放っておけます。
そして、たぶんいちばん大事なのはここです。引用されているのは、上の雑記メディアでは234本のうち66本だけでした。書けば使われるわけではありません。仮に将来お金が付いたとしても、付くのは「AIが使いたくなる記事」だけです。
集客にならないから書かない、ではなく、使われる記事を書いておく。いまのところ、それが私に出せる結論です。
この記事で使った出どころ
- マイクロソフト公式ブログ「Building Toward a Sustainable Content Economy for the Agentic Web」(2026年2月3日)
- Perplexity 公式ブログ「Introducing Comet Plus」
- Cloudflare 公式ブログ「Making AI search smarter」
- Cloudflare 公式プレスリリース「Your Content, Your Rules」(2026年7月1日)
- RSL 公式プレスリリース(2025年9月10日)
- RSL Collective 公式「Licensing Partners」
- 日本新聞協会「『知的財産推進計画2026』の策定に向けた意見」(2025年12月23日)
- 知的財産戦略本部「知的財産推進計画2026」(2026年6月12日・PDF)
- OpenAI 公式「Bots」/Anthropic 公式「Does Anthropic crawl data from the web…」
- Bing Webmaster Tools(この記事の数値の取得元)
サイトの数値は、すべて筆者が Bing Webmaster Tools から2026年9月8日に書き出したものです。
この記事の著者・監修
カツ
カツプロ運営者のカツです! AI・Web関連から、日常のことなど、私目線の回答も交えながらお伝えします!
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