コーディングの営業メール7通を比較|納期の速さは、もう強みになりません
かつ
2026/09/07
弊社の問い合わせフォームには、「コーディングを外注しませんか」という営業メールがほぼ毎日届きます。
先日、たまってきたので「7通を並べて読み比べてみました」。個人のコーダーが5人、外部ディレクターが1人、法人の代理店が1社。以下、個人が特定できる情報は一切出しません。名前・連絡先・実績サイトのURLは伏せて、書かれていた内容だけを扱います。
この記事は、『いま制作会社に営業メールを送っている人、これから送ろうとしている人、そしてプログラミングスクールで「実績には納期を書きましょう」と教わった人』に向けて書いています。読んで気分のいい話ではないと思います。それでも、次の1通を送る前に知っておいたほうがいいことです。

その「強み」、7人全員が書いていました
まず、これに驚きました。
7通中7通が「手戻り・確認の往復を減らします」を売り文句にしていました。
- 「指示と違う、の手戻りは納品前に減らします」
- 「実装前のモヤモヤを解消します」
- 「指示出し工数を減らせるコーダーです」
- 「確認と修正対応が多すぎる、をなくします」
言い方は違いますが、中身は同じです。営業する側は全員、発注側の一番の痛みがそこだと読んでいる。そして実際、その読みは正しいと思います。
やり方も似ていました。着手前に不明点をまとめて一度で聞く、命名とCSS設計のルールを守る、納品前にチェックシートで全ページ確認する、進捗をこまめに共有する。どれも真っ当です。真っ当なのですが、「7人が同じことを言っている時点で、そこでは1ミリも差がつきません。」
あなたが時間をかけて考えた一文は、たぶん今日、他の6人も送っています。
「12ページに3週間」が、いま何を意味するか
各メールに書かれていた実績を、ページ数と期間で並べるとこうなります。
| 内容 | 期間 | 1ページあたり |
|---|---|---|
| WordPress 16ページ(多言語対応) | 1ヶ月半 | 約2.8日 |
| WordPress 6ページ | 3週間 | 約3.5日 |
| 静的コーディング+WordPress 12ページ | 約21日 | 約1.8日 |
| WordPress 10ページ | 5日 | 0.5日 |
| LP 4ページ | 3日 | 0.75日 |
これを「速さの実績」として、自己PRに書いてきています。
7通の中でいちばん速いのは、「WordPress 10ページを5日」の人です。約140件の実績があると書いていて、数字にも一貫性がありました。7通を通して見れば、この人が頭ひとつ抜けています。
ただ、正直に書きます。この5日も、いまの基準ではもう速くありません。あとで実際の案件の時間を出しますが、桁がひとつ違います。
そして残りは、さらに遅い。「6ページに3週間、12ページに3週間、16ページに1ヶ月半。」これを「大きな手戻りなく進行できました」と、制作実績のトップに置いて送ってきています。
15ページのコーディングは、いま30分で終わります
比較のために、自分の作り方を2つ書きます。
Figmaを作らない場合|数日〜1週間で公開まで
いまの標準はこちらです。ワイヤーフレームから、いきなりコードを書きながらデザインを作ります。
テストサイトに上げてクライアントに確認してもらうまで、「早ければ数日から1週間。」デザインOKが出たら、そのまま本番に公開して終わりです。
ここが大事なところで、確認してもらっている時点で、コーディングは終わっています。「デザインを確認 → それからコーディング」という工程が存在しません。だから「デザイン確認に3日、コーディングに2週間」のような足し算になりません。
なぜFigmaを飛ばすのか。速いからではなく、確認用と実装がズレるからです。詳しくは以前の記事に書きました。
ワイヤーフレームからコーディングまで3時間|Claudeで変えた工程と単価の話動物病院サイトのリニューアルで、ヒアリング後3時間でTOPと下層15ページの初稿を作った記録。Fi...
Figmaがある場合|コーディング30分、完成まで1〜5日
クライアントや制作会社からFigmaが支給されるケースもあります。この場合は、「Figma MCPとClaudeを連携」させて組みます。
前提が1つあります。Figma側でフレームとトリミングがきれいに作られていること。ここが雑だと精度が落ちます。逆に、そこさえ整っていれば——
- 「1ページあたり数分」
- 「15ページ規模のサイトでも、コーディングは30分ほどで終わる」

そのあとFigmaと画面を並べて目視で照合し、うまく出ていないところに修正指示を出すか、自分で少し直します。ここまで含めて、「早ければ1日。だらだらやっても3〜5日」です。15ページで、です。
実際の案件では、こうでした
いま進行中の2件で、実際にかかった時間を書きます。どちらもクライアント名は伏せます。
「クリニックのサイト|Figma支給・WordPress」
デザインがFigmaで揃っていたので、そこからのコーディングは「全ページで1時間以内」でした。実際には、寝る前に指示を出して、起きたら終わっていました。スマホ表示も自動で作られています。そのあとのWordPress化と、目視での修正を足して、「合計1〜2時間」です。
「動物病院のサイト|Figmaなし・10数ページ」
- 初回打ち合わせ:「60分」
- ワイヤーフレームの作成(Claudeで):「約1時間」 → 提出してOKをもらう
- そのワイヤーフレームをもとにデザインを決め、テストサイトで実装しながら確認:「約3時間」 → 提出
いまはピンポイントの修正をしているだけです。10数ページあって、「打ち合わせから提出まで合わせて約5時間」でした。
営業メールの数字と、並べます。
| 規模 | 実際にかかった時間 | |
|---|---|---|
| 営業メール・いちばん遅い | WordPress 16ページ | 1ヶ月半 |
| 営業メール・いちばん速い | WordPress 10ページ | 5日 |
| 私/クリニック(Figma支給) | 全ページ | 1〜2時間 |
| 私/動物病院(Figmaなし) | 10数ページ | 約5時間(打ち合わせ60分込み) |
日と時間で単位が違います。「そこまで開いています。」
15分、30分で終わらせる人が、もう普通にいます
ここまでは私ひとりの話なので、「たまたまでしょう」と思われるかもしれません。そうではありません。
道具は誰でも買えます。月に数万円のプランと、整ったデザインデータ。それだけで届く水準です。特別なことは何もしていません。デザインが揃っているなら、1ページのコーディングは15分から30分で終わる。これが、もう珍しくなくなりました。
つまり、あなたの見積もりを受け取る制作会社の中に、その水準の人がすでにいる可能性があります。その人の隣に「10ページ5日でできます」と書いた紙が並ぶ。そこで何が起きるかは、想像がつくと思います。
短納期アピールは、いま「勉強していない証拠」として読まれます
ここまでが事実で、ここからが意見です。
納期の速さをアピールした瞬間、「比較の土俵に乗ります。」そして今の土俵では、もう勝てません。
「12ページを3週間で、手戻りなく納品しました」と書いて送ると、受け取った側が今の作り方を知っていれば、こう読まれます。
この人は、いまの道具を使っていない
7通でいちばん速かった「WordPress 10ページを5日」でも、同じです。書いた本人は速さの証明のつもりでも、受け取る側にはこう見えます。
10ページに、5日も かかる人
「も」が付くかどうかは、読む側の基準で決まります。そして基準は、去年から動きました。
強みとして書いたものが、そのまま「知識と経験のアップデートが止まっている証拠」として読まれてしまう。これが一番もったいないところです。
とくに、同業の制作会社に下請けとして営業するなら、納期の速さを強みにしないほうがいい。エンドクライアントへの営業ならまだ通じる余地はありますが、制作会社は自分たちで作れます。作れる相手に「3週間でできます」と言うのは、単価の話をする前に終わっています。
悪いのはあなたじゃない。教えている側が止まっている
もう一歩踏み込みます。
『「3週間で納品」を良いね、と評価する制作会社があるとしたら、その制作会社自身も更新できていません。』そこで発注が成立してしまうから、営業する側も「これでいいんだ」と思ってしまう。
そして、『それを強みとして教えているプログラミングスクールやメンターも、更新できていません。』「実績にはページ数と納期を書きましょう」「短納期対応をアピールしましょう」——2年前は正しかった。いまは、書き方によっては逆効果になります。
営業メールの文面自体は、どれもよくできていました。構成も丁寧で、読ませる工夫もある。「教わったとおりに、真面目に書いてあります。」教わった中身のほうが古いのです。
ただし、ここは誤解のないように書きます。教えている側に責任があることと、あなたの見積もりが通ることは、別の話です。
スクールでそう教わった。ネットで調べた相場に合わせた。まわりもこう書いている。どれも本当のことだと思います。ただ、受け取る側にはひとつも関係がありません。発注する人が見ているのは、「あなたがいま何を、どれだけの時間で出せるか」だけです。
だから、いま学んでいる人に一番伝えたいのはここです。「カリキュラムが去年のままなら、卒業した時点で去年の武器しか持っていません。」スクールを責めても仕事は来ないので、自分で確かめるしかありません。いま自分が3週間かけている作業を、いまの道具で作った人が何分で出すのか。一度、手を動かして比べてみてください。
では、何を書けば残るのか
批判だけで終わらせたくないので、7通を読んで「これは効いた」と思ったものを書きます。
その場で確かめられる実物があること
7通のうち2人は、実際に触れるデモサイトを出してきました。1人はGSAPで作ったアニメーションのデモ、もう1人はコワーキングサイト1本まるごと。資料やスライドを送ってきた人より、「この2人のほうが明らかに残りました。」説明ではなく、動くものを見せているからです。

ただし、この2人には減点もあります。「どちらも、閲覧制限をかけたデモサイトのIDとパスワードを、メール本文に平文で書いてきました。」信頼を得るための手が、そのまま「情報の扱いが雑な人かもしれない」という判断材料になっています。制作会社は、クライアントのサーバー情報や管理画面の認証情報を預かる仕事です。ここは見られています。
宛名のない一斉配信は、分かります
7通中2通は、営業メール配信ツールから送られていました。実績リンクがクリック計測用のリダイレクトになっていたり、配信停止リンクが付いていたり。うち1社は、「同じ内容が2通届いていました。」開封率は取れるでしょうが、届いた側から見ると「誰にでも当てはまる文章」です。
速さではなく、速くなったぶんで何をしているか
これが本題です。
コーディングが30分で終わるようになって、何が空いたか。私の場合は、そのぶんを「どう作るかの判断」と「クライアントとの詰め」に使っています。実装が速い人の価値は、いま実装そのものではなく、空いた時間に何を積めるかのほうに移りました。
まとめ|いま営業メールを書いている人へ
- 届いた7通は、7通とも「手戻りを減らします」を売っていた。そこでは差がつかない
- 実績として書かれた納期は、6ページで3週間、12ページで3週間、16ページで1ヶ月半。いちばん速い1通でも10ページに5日
- 実際の案件は、Figma支給のクリニックが全ページ1〜2時間、Figmaなしの動物病院が10数ページで約5時間。日と時間で単位が違う
- 納期の速さを強みとして書くと、比較の土俵に乗って負ける。むしろアップデートしていない証拠として読まれる
- それを評価する制作会社も、そう教えるスクール・メンターも、同じところで止まっている
- 差がついたのは「その場で確かめられる実物があるかどうか」だった。ただし認証情報を平文で送るのは、その価値を打ち消す
- 1ページを15分から30分で終わらせる人は、もう珍しくない。その隣に自分の見積もりが並ぶ
道具は誰でも買えます。買った人と買っていない人の差は、去年より広がっています。
そして、その差を誰かが埋めてくれることはありません。相場も、スクールのカリキュラムも、勝手には更新されません。更新するのは、自分の手のほうです。
この記事の著者・監修
カツ
カツプロ運営者のカツです! AI・Web関連から、日常のことなど、私目線の回答も交えながらお伝えします!
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