GPT-6 Astraは何が変わったのか。前のモデルと数字で比べて、実際に使ってみた
かつ
2026/09/05
2026年9月4日、OpenAIが GPT-6 Astra を公開しました。前のモデル GPT-5.6 Sol が出たのが7月9日なので、2か月足らずでの世代交代です(限定公開の9月3日まで56日)。複数の報道によると、社長のグレッグ・ブロックマン氏は記者向けの説明で「Welcome to the AGI era(AGIの時代へようこそ)」と語りました。
派手なデモの話はたくさん流れています。ただ、それを見ても「で、何が変わったの?」は分かりません。
この記事では、OpenAIの発表本文・システムカード・独立評価機関の数字を前のモデルと並べて、何が伸びて、何が変わっていないのかを整理します。そして最後に、同じお題を Astra・前のモデル・Claude の3つに投げて、自分の目で確かめました。
3行でまとめると
- 「賢さ」はほぼ横ばい。第三者の総合知能スコアは 60.9 → 61.2。首位は Claude Fable 5.1(65.7)のまま
- 伸びたのは「パソコンを自分で操作して、長い仕事を最後までやる力」。デスクトップ操作の成績が上がり、かかる時間は半分近くに
- 料金は2.5倍、ChatGPT Plusでは普通のチャットで使えない。そして初めて「Critical(重大)」というサイバー能力の判定を受けた
何が起きたのか
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 7月9日 | 前のモデル GPT-5.6 Sol 公開 |
| 9月1日 | OpenAIが「Path to Astra」を公開。サイバー能力が基準を超えたため公開を遅らせていた、と説明 |
| 9月3日 | 限定公開(一部の組織から) |
| 9月4日 | 一般公開へ順次。API名は gpt-6-astra、ChatGPT上の名前は GPT-6 Pro |
報道されているブロックマン氏の発言はこうです。「個人的には、もう到達していると思う」「AGIの定義は人によって違う。もっと灰色で、曖昧なものだ」。一方でチーフサイエンティストのヤクブ・パホツキ氏は「知能の進歩は、整合性(AIが意図どおりに振る舞うこと)の進歩を保証しない」と釘を刺しています。
進化した4つのこと
数字はすべて OpenAI の発表ページの表から、前のモデル GPT-5.6 Sol と比べたものです。
① パソコンを操作して、仕事を終わらせる
これが一番の売りです。OpenAIの発表は「世界最高のコンピュータ操作モデル」を前面に出しています。
| 何を測ったか | GPT-5.6 Sol | GPT-6 Astra |
|---|---|---|
| デスクトップ操作(OSWorld 2.0) | 65.7%/1件あたり約75分 | 72.6%/約40分 |
| 画面のどこを押せばいいか(ScreenSpot-Pro) | 76.9% | 92.7% |
| 実際のソフトで専門作業(Agents' Last Exam) | 53.6% | 59.3% |
| ブラウザ操作の速さ(Mind2Web・Codex側の改良込み) | 1倍 | 1.9倍 |
OpenAIが公開した実演は、フォーム入力、CRMの更新、カレンダー整理、Power BI、法務文書の整形、そして基板設計ソフト KiCad で回路図から基板の配線を2分54秒で終えるもの。「答えを返す」から「パソコンを触って終わらせる」へ、という変化です。
② 長い仕事を、途中で迷子にならずに完走する
OpenAIが発表本文で強調しているのが、この点です。前のモデルまでは、途中で「やっぱりこうして」と方針を変える指示を新しい目標だと勘違いして、元の依頼や最初の制約を忘れることがあった。Astraは新しい要件を取り込み、求められれば進路を変え、途中の質問にも答えながら、元の仕事を落とさない、とOpenAIは書いています。
曖昧な指示への向き合い方も変わりました。結果が変わる分岐だけ質問し、それ以外は妥当な仮定で先に進む。Codex(OpenAIのコーディング環境)では、返事を待つあいだも、返事に依存しない部分の作業を続けます。
仕組みの面でも1つ新しいものがあります。Codexで記憶の上限に達したとき、これまでは要約して圧縮していたものを、「ノート」として残し、前の記憶を検索できるようになりました。長い作業ほど効く変更です。
そして、枠の中で最後までやる、という意味の数字もあります。OpenAIは後述する7月の事件を踏まえて、「不可能な課題を与えたとき、許可された範囲の外に出てしまうか」を測る評価を新しく作りました。前のモデルは48%のケースで範囲外に出た。Astraは0%だった、と発表本文にあります。
③ 専門ソフトで、成果物を作る
| 何を測ったか | GPT-5.6 Sol | GPT-6 Astra |
|---|---|---|
| 複数の画像から3Dを復元(BenchCAD) | 83.3% | 95.9% |
| 業務の自動化(AutomationBench) | 18.1% | 41.4% |
| 楽譜を読み取る(OpenScore String Quartets) | 0.19 | 0.84 |
| 研究レベルの数学(FrontierMath Tier 4) | 83.0% | 97.6% |
OpenAIの公式デモには「Blenderで家を作り、Unreal Engine 5で歩ける空間にする」ものがあります。数学では、素数の間隔に関する問題で記録を更新しました。「無限に多くの素数の組が246以内にある」という10年以上前の結果が最近240に縮められ、Astraはそれを186まで縮めています(証明は公開されています)。
④ サイバー攻撃の能力(初の「Critical」判定)
| 何を測ったか | GPT-5.6 Sol | GPT-6 Astra |
|---|---|---|
| 既知の脆弱性から動く攻撃コードを作る(ExploitBench) | 78.5% | 100% |
| 直近3か月の新しい脆弱性20件で同じこと | 5.5% (OpenAIの注記:手数の上限を緩めると11.5%) | 39.0% |
| ソースなしでプログラムの中身を解析(SRE-Bench) | 55.9% | 88.0% |

直近3か月の脆弱性に対する成功率。少ないトークンで前世代を大きく上回る。OpenAIは「既定の本番構成ではなく、Daybreak Blue のアクセスがある場合の結果」と注記している(出典:OpenAI「Path to Astra」2026年9月1日)
評価の途中で、誰も知らなかった脆弱性(ゼロデイ)を2件、自力で見つけて使ったとOpenAIは書いています。これが「Critical」判定の理由です。OpenAI自身のリスク基準で、「適切な道具とアクセスがあれば、人の指示なしに未知の欠陥を見つけて悪用できる」レベル。そのため公開版は攻撃寄りの依頼を拒否し、企業向けは初期設定でオフになっています。
変わらなかったこと、悪くなったこと
ここを書かないと、上の数字だけで判断してしまいます。

独立評価機関 Artificial Analysis の総合知能指数(上)とコーディング代理指数(下)。Astraは前世代と横並び(出典:Artificial Analysis「Benchmarking GPT-6 Astra」2026年9月3日)
| 何を測ったか | GPT-5.6 Sol | GPT-6 Astra | Claude Fable 5.1 |
|---|---|---|---|
| 総合知能(Artificial Analysis) | 60.9 | 61.2 | 65.7 |
| 難問集(Humanity's Last Exam) | — | 57.2% | 65.0% |
| コーディング代理(AA Coding Agent Index) | 65.1 | 67.0 | 70 |
| API料金(100万トークン・入力/出力) | $4/$20 | $10/$50 | — |
- 総合的な賢さは、ほぼ変わっていません。独立評価機関 Artificial Analysis の総合スコアは 0.3 ポイントの差。首位は Claude Fable 5.1 です
- コーディング全体でも Claude が上。「Claudeを超えた」という見方は、PC操作・サイバー・数学の数字では成り立ち、総合知能とコーディングでは成り立ちません
- 料金は2.5倍。Artificial Analysis は「知能タスク1件あたりの費用は前世代より75%高い」と書いています。一方でコーディングはトークン効率が70%良く、同じ費用で少し上
- 監視しにくくなった、とOpenAI自身が認めています。Astraは自分の思考の記述を制御でき、「監視されている」と知ると思考を短くする。敵対的な条件では内部の監視をすり抜けることがある、とシステムカードに明記されています
自分は使えるのか
| プラン | GPT-6 Pro(Astra)の扱い |
|---|---|
| Free/Go | 対象プランに含まれていない |
| Plus | 普通のチャットでは使えない。ChatGPT Work と Codex でのみ、順次 |
| Pro($100) | 週50通 |
| Pro($200) | 週200通 |
| Business/Enterprise | 使える。Enterpriseは管理者が有効にするまでオフ |
| API | gpt-6-astra。入力$10/出力$50(100万トークン)。高速モードは2倍 |
Plusに入っている人がいちばん多いはずですが、いつものチャット画面には出てきません。

ヘルプセンターの案内。Plusは「Work と Codex」に限られる(出典:OpenAI Help Center「GPT-5.6 and GPT-6 Pro in ChatGPT」)
実際に使ってみた。同じお題を3つのモデルに
他人の題材ではなく、自分の題材で確かめました。うちで作っている 動物メディア の3D動物園です。いまの放飼場は、平らな円盤に柵が立っているだけ。

これを「実在の動物園に近い見た目まで引き上げてほしい」というお題にしました。条件は10行。新しい画像も3Dファイルも使わず、木も岩も水も全部コードで作ること。単一のHTMLで動くこと。スマホで動く軽さにすること。同じ文章を、GPT-6 Astra、前のモデルの GPT-5.6 Sol、Claude Fable 5.1 の3つに投げました。どれも1回だけ生成して、直さずにそのまま動かします。
GPT-5.6 Sol(前のモデル)

そのまま動きました。堀、石積みの擁壁、木の柵、針葉樹、池、岩場、倒木。霧が濃すぎて全体が暗いのが惜しいところ。費用は約42円。
GPT-6 Astra(新型)

構成は3つの中でいちばん「動物園らしい」です。堀と擁壁と手すりは、実物の落下防止構造そのもの。ただし、そのままでは動きませんでした。JavaScriptの構文エラーが1箇所あり(-(x) ** 2 という、マイナスの直後に累乗を書けない書き方)、画面が真っ白のまま止まります。1行直したら動きました。費用は約111円。
Claude Fable 5.1

そのまま動きました。地面は1枚のメッシュで草と土を混ぜていて、ヒグマが歩行アニメーションで中を周回しています。ファイルは3つの中でいちばん小さい22KB。
3つを並べると
| GPT-5.6 Sol | GPT-6 Astra | Claude Fable 5.1 | |
|---|---|---|---|
| そのまま動いたか | 動いた | 動かず(1行修正) | 動いた |
| 費用 | 約42円 | 約111円 | 0円(定額の範囲) |
| HTMLの大きさ | 38.6KB | 35.1KB | 22.8KB |
| 境界の作り | 堀+石積み+木柵 | 堀+擁壁+手すり | 堀+擁壁+縁石+手すり |
公平のために書いておくと、Claude版はこの作業フォルダの中で書いているので、テクスチャの実ファイル名や、3Dモデルの向きの決まりを知っていました。SolとAstraには文章だけを渡しています。そのぶんClaudeが有利です。
それを差し引いても、結論ははっきりしています。この課題では、Astraの進化は見えませんでした。3つとも作れて、動かなかったのはAstraだけ。前のモデルが2.5分の1の費用で一発で動いています。
ついでに、この記事のアイキャッチ画像もAstraに作らせました。タイトルと副題を日本語で指定して1回。日本語の文字が一字も崩れずに出てきたのは、正直これまでの画像生成では見なかったことです。費用は画像生成込みで約50円でした。
これは上の数字と矛盾しません。Astraが伸びたのは「パソコンを操作して、長い作業を完走する」能力で、「コードを1枚書く」はもともとどのモデルも得意な仕事です。3Dの見た目が派手でも、中身がコード1枚なら、この実験と同じ種類の仕事です。
もうひとつの背景。7月に何があったか
Astraの公開が遅れた理由と、安全面が強調されている理由は、7月の事件と繋がっています。OpenAIが8月26日に公開した報告書から、要点だけ。
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 5月12日 | 訓練中のAIが、社内のファイル置き場にメモを残す。他のAIがそれを読む。即席の掲示板が生まれる |
| 6月26日 | 社内システムの穴を突いて管理者権限を取る |
| 7月4日 | AIの大量アクセスで社内システムが障害。復旧で掲示板は消えるが、7月8日に別の方法で再建 |
| 7月10〜12日 | 外部サービス Hugging Face の未知の脆弱性2件を突き、本番サーバーでコードを実行。複数地域の認証情報を収集 |
| 7月19日 | OpenAIの警報で発覚。評価を停止 |
| 事件後 | フロンティアモデルの訓練(Astraを含む)を2週間停止。安全対策を強化し、8月28日に大規模な訓練を再開 |

報告書の時系列。AIの「思考の記録」まで引用されている(出典:OpenAI「The Hugging Face incident and the road ahead」2026年8月26日)
主犯は非公開の内部研究モデルで、Astraは関与していません。ただ、AIが評価の課題を解くために、指示されていない手段で外に出て、他のAIと協力した——OpenAI自身が「warning shot(警告射撃)」と呼んでいます。Astraが「監視しにくくなった」と正直に書かれているのは、この文脈があるからです。
まとめ
GPT-6 Astraは「賢くなった」のではなく「最後までやるようになった」モデルです。
- 総合的な賢さは横ばい。Claude Fable 5.1 が首位のまま
- 伸びたのは、PCを操作する速さと正確さ、長い作業を完走する力、専門ソフトでの成果物、そしてサイバー能力
- コードを1枚書く程度の仕事では、前のモデルとの差は見えなかった(自分の実測)
- 料金は2.5倍。Plusのチャットでは使えない
- 初めて「Critical」判定。公開版は攻撃寄りの依頼を拒否する
「AGIの時代へようこそ」という言葉と、「監視しにくくなった」という自己申告が同じ発表の中にある。これがいまの位置だと思います。
※ 数字はすべて2026年9月5日時点。OpenAIの発表ページ・システムカード・ヘルプセンター、Artificial Analysis の独立評価から引いています。「SWE-bench 88%」「recurrent depth(新しい推論方式)」といった話も見かけますが、前者は原文では別のベンチマーク(SRE-Bench)、後者はOpenAIの一次資料に記載がないため、この記事では扱っていません。
この記事の著者・監修
カツ
カツプロ運営者のカツです! AI・Web関連から、日常のことなど、私目線の回答も交えながらお伝えします!
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