カツプロ
ログイン
← 投稿一覧
つづはじ 2026年9月5日

主題歌をSunoで作ったあと、Googleの新しい音楽AIに同じ歌詞を歌わせてみた

かつ

かつ

2026/09/05

つづはじ 制作コラム『同じ歌詞を、別のAIに歌わせた』決め手になったのは、料金ではなかった

つづはじの主題歌2曲は、Suno で作りました。「途(みち)」と「はじまりが あれば」。全40話は、この2曲があることを前提に組んであります。

その3週間後の2026年9月4日、Google が音楽生成モデル Lyria 3.5 を Gemini API で公開しました。「これまでで最も良い音の音楽生成モデル」と発表されています。

そこで、完成した主題歌とまったく同じ歌詞を Lyria 3.5 に投げて、1曲作らせました。この記事は、その2曲を並べて聴けるようにしたうえで、料金・商用利用・著作権・声の扱いがどう違うのかを調べた記録です。

3行でまとめると

  • 音は、正直どちらも良い。同じ歌詞・同じ尺で、実用に足るものが返ってきた
  • 料金は Lyria が圧倒的に安い。Suno は月額¥1,500、Lyria は1曲12円。ただし月125曲を超えないと差が出ない
  • 決め手は声だった。Lyria は声のクローンができず、公式にも「同じプロンプトでも結果は変わる」と明記されている。シリーズものには使えない

まず、聴き比べてください

歌詞は1文字も変えていません。同じ「はじまりが あれば」です。

① Suno v5.5 ── 作品で実際に使っているもの(90.0秒)
② Google Lyria 3.5 ── 同じ歌詞を投げて1回で出たもの(91.6秒)

②は1回目の生成です。作り直していません。AI音楽は当たり外れの幅が大きいので、何回もまわせば違う結果になります。それでも1発でここまで出るのか、というのが最初の感想でした。

条件をどこまでそろえたか

フェアな比較になるよう、渡せるものは全部そろえました。

Suno v5.5Lyria 3.5
歌詞同一([Verse] [Chorus] などのセクションタグ込み)
スタイル指定japanese pop, ballad, anime ending theme同じ文字列+100 BPM/Female vocal
結果の長さ90.0秒91.6秒
ビットレート183kbps193kbps
生成回数制作時に複数回1回のみ

ひとつ正直に書いておくと、Suno に入れたスタイル文の全文は残っていません。管理画面に表示されている冒頭3語だけが手がかりでした。Lyria 側にはそれをそのまま渡しています。

Lyria は [Verse] のようなセクションタグに対応していて、日本語の歌詞もそのまま歌います。返ってきたデータを見ると、歌詞は1行も改変されず、指定した構成どおり5つのセクションに分かれていました。尺も「90秒の曲を作って」と書いたとおりです。

料金 ── 月額と従量、どちらが安いか

Suno(Pro)Lyria 3.5(Gemini API)
課金月額 ¥1,5001曲 $0.08(約12円)
無料枠あり(ただし商用は禁止)なし
損益分岐月125曲を超えると Suno のほうが安い

つづはじの実績で言うと、主題歌を作った月の請求は ¥1,500 で、その月に作ったのは2曲でした。1曲あたり750円です。Lyria なら24円で済んだ計算になります。

ただし月額には作曲以外がついてきます。Remix、部分的な作り直し、ライブラリ管理、DAW的な編集環境。「気に入るまで何度もまわす」使い方をするなら、回数を気にしなくていい月額のほうが精神的に楽です。Lyria は1回ずつ API を叩く形になるので、耳で聴いて即座に作り直す小回りは効きません。

権利の条文が、実は違う

ここがいちばん調べ甲斐のあったところです。どちらも「商用利用できる」のですが、規約の書き方が違います。

Suno(有料プラン)は、こう書いています。

"Suno hereby assigns to you all of its right, title and interest in and to any Output owned by Suno and generated from Submissions made by you"

assign = 譲渡する。Suno が持っている権利を、こちらに積極的に渡すと明言しています。なお無料プランは "solely for your lawful, internal, personal and non-commercial purposes" と、商用利用を明確に禁止しています。

一方、Gemini API の規約はこうです。

"Google won't claim ownership over that content."

「所有権を主張しない」とは書いてありますが、「譲渡する」とは書いていません。さらに Google は、同じか似た生成物を他の人にも出す権利を留保しています。

実務上はどちらも「商用で使ってよい」で同じ結論になります。ただし権利の強さで言えば、条文が積極的な Suno のほうが上です。作品の主題歌のように「うちの曲」として長く扱うものなら、この差は知っておく価値があります。

投げた歌詞は学習に使われるのか

オリジナルの歌詞を渡す以上、ここは気になるところです。Gemini API の規約は、無料と有料ではっきり分けています。

条文
無料"Google uses the content you submit to the Services...to provide, improve, and develop Google products"
有料"Google doesn't use your prompts...or responses to improve our products"

そして Lyria には無料枠がありません。使えば必ず有料サービス側になります。つまり、投げた歌詞が Google の学習に使われることはありません。これは未発表の作品を扱ううえで、地味ですが大きい条件です。

決め手は「声」だった

料金でも権利でもなく、判断を決めたのはここでした。

Lyria 3.5 は、声のクローンができません。特定のアーティストの声を求めるプロンプトと、著作権のある歌詞の生成は、フィルタでブロックされます。自分の声を登録して歌わせることもできません。

できるのは、言葉で声質を描写することだけです。「Airy Female Soprano」「Deep Male Baritone」「Raspy Rocker」のように、性別・声の質感・音域を書けます。

そのうえで、公式ドキュメントにこう書かれています。

"Results may vary between calls, even with the same prompt."
(同じプロンプトでも、呼び出しごとに結果が変わることがあります)

手元でも確かめました。生成を固定する seed パラメータが見当たらなかったので、API のモデル情報を直接叩いてみたのですが、返ってくるのは温度などの一般的な値だけでした。

"name": "models/lyria-3.5", "temperature": 1, "topP": 0.95, "topK": 64

ここは正確に書いておきます。「Lyria に seed が無い」わけではありません。seed があるのは lyria-realtime-exp(Lyria RealTime)のほうで、0〜2,147,483,647 の範囲で指定できます。ただしこちらは公式の説明が「instrumental music」──楽器だけで、歌いません。

Lyria RealTimeLyria 3.5
モデルIDlyria-realtime-explyria-3.5
seedある記載なし
作れるものinstrumental music(楽器のみ)full songs and vocal tracks

seed があるほうは歌えず、歌えるほうには seed が無い。

これが何を意味するかというと、「1曲目と2曲目を同じ歌手の声で」ができないということです。つづはじは主人公ふたりの視点で2曲を作り分けたので今回は影響がありませんが、シリーズを通して声を統一したい作品では致命的です。

Suno は v5.5 で声のクローンとカスタムモデルの学習に対応しました。ここは Suno の明確な優位点です。

法的リスクは、どちらにもある

「Google なら安心」で終わらせないために、係争の状況も調べました。

  • 2026年7月31日、ミュンヘンの裁判所が Suno に著作権侵害の判決を出しました。学習データがモデル内に記憶され、再現可能な形で含まれていたという判断で、ドイツでの提供を禁じる仮処分まで出ています
  • Google も係争中です。ミュージシャンからの提訴に対し「原告は自分の楽曲が使われたと立証できていない」と反論しています。Lyria の学習データは開示されていません
  • ユニバーサルは Udio と、ワーナーは Udio・Suno と和解済み。ソニーミュージックは2026年6月時点で係争を継続しています
  • Lyria の生成物には SynthID という透かしが必ず入ります。人の耳には聞こえませんが検出でき、除去は規約違反です

どちらのサービスも「第三者の権利を侵害しない」ことまでは保証していません。サービス側が商用利用を認めていることと、出てきた曲が誰の権利も侵していないことは、別の話です。ここは自分で引き受ける部分として残ります。

まとめ

Suno(Pro)Lyria 3.5
料金月額 ¥1,5001曲 約12円
商用利用有料プランのみ可全プランで可
権利の条文譲渡する(assign)所有権を主張しない
投稿内容の学習利用されない(必ず有料扱いのため)
声のクローンできるできない
同じ声の再現できるできない(同じプロンプトでも結果が変わる)
歌詞の持ち込みできるできる(日本語・セクションタグ対応)
透かしSynthID が必ず入る
編集環境あり(Remix・Studio)なし(音声ファイルが返るだけ)

つづはじはどうするか

主題歌は Suno のまま続けます。理由は権利でも料金でもなく、声を指定できないことです。2曲はすでに完成していて、それを前提にした40話があります。ここを揺らして得られるものがありません。

一方で、BGM や効果音は Lyria に移す価値が大きいと考えています。声が要らない用途なら、Lyria の弱点がそのまま消えます。1曲12円で、投げた内容が学習に使われることもありません。

まだ確かめていないことも書いておきます。「声質を言葉で指定したとき、どれくらい狙った声が出るのか」と、同じ指定で2回まわしたときのブレ幅です。ここが分かれば、Lyria をどこまで任せられるかがはっきりします。分かったら、また書きます。

※ Lyria 3.5 の引用は Gemini API 公式ドキュメント Generate music with Lyria 3.5、seed の記述は Real-time music generation using Lyria RealTime より(2026年9月5日確認)。
※ この記事は2026年9月5日時点で各社の規約・報道を確認した内容です。規約は変わります。また、法律の専門家による助言ではありません。実際に商用で使う際は、そのときの最新の規約をご自身で確認してください。

この記事の著者・監修

カツ
生成AIエンジニア/フロントエンドエンジニア/舞台監督などなど

カツ

カツプロ運営者のカツです! AI・Web関連から、日常のことなど、私目線の回答も交えながらお伝えします!

この記事をシェア

note

スポンサーリンク

コメント(0)

まだコメントはありません。

コメントは Tier 1(有料)の機能です。ログインのうえアップグレードしてください。

こちらの記事も読まれています