短いプロンプトだけでAIに恐竜映画を作らせた|5回作り直して13ドル、先に静止画が要る理由
かつ
2026/09/28
恐竜映画のような「巨大な恐竜から逃げるシーン」を、Google の Gemini API だけで作ってみました。やったのは、短いプロンプト(簡単な指示)を書いて、出てきた動画を見て、直してほしい所を伝えることだけです。
5回作り直して、かかった費用は13.14ドル(約2,070円)。それでも、出来上がったのは「まだこのくらい」のものでした。ボツにした動画も含めて、全部お見せします。
3行でまとめると
- 短いプロンプトだけでも、それらしい映像はできる。ただし細かい所がおかしく、直すたびに作り直しになる
- 費用の97%が映像。8秒の映像は1本約126円で、5回の作り直しで16本作り、完成に使ったのは5本だった
- もっと作り込んで、しかも安くするには、先に静止画を作って確かめる手順が要る。静止画は1枚約11円で、映像の約12分の1
完成版(5回目)
縦型・44.5秒です。助手の声はAIで一から作った声、博士の声は本人の同意のうえで複製した声です。最後に博士が恐竜に食べられて、タイトルが出ます。
それでも、おかしな所はたくさん残っています。食べられる場面で助手が宙に浮いて見える、奥に別の恐竜がもう1頭いる、口の動きがセリフに合っていない、などです。
やったこと
頼んだのは、次のようなシーンです。
- 雨上がりの森で、泥に残った巨大な足あとをのぞき込む助手と博士
- 足あとの水たまりに、地響きで波紋が広がる
- 森の奥から巨大な恐竜が現れて吠える
- 2人が逃げ、恐竜が追いかける
- 博士が追いつかれて食べられ、BGMとタイトル「カツの恐竜日記」
映画の名前や、特定の作品の見た目は、指示に入れていません(後の「商用利用」で書きます)。
5回の作り直しと、それぞれの費用
| 回 | 直したこと | 費用 |
|---|---|---|
| 1回目 | 最初の版(4カット・32秒) | 3.21ドル |
| 2回目 | 足あとの形をそろえた・博士のセリフを増やした | 1.67ドル |
| 3回目 | 恐竜が出てくる所の木の動き・博士の声の緊迫感 | 0.81ドル |
| 4回目 | 博士を30歳くらいの小太りに・食べられる場面・BGM・タイトル | 3.44ドル |
| 5回目 | 縦型で全部作り直し・恐竜の位置・食べられ方・タイトルの見せ方 | 4.00ドル |
| 合計 | 映像16本(完成に使ったのは5本) | 13.14ドル |
出典:カツプロ調べ(2026年9月28日・API 使用量の記録から)。円は1ドル157.59円で換算(2026年9月25日の参考レート)。
1回目:足あとの形がカットごとに違う
- 足あとの形が、カットによって王冠のようになったり、丸い玉が並んだりした
- 博士の声が「私の声に聞こえない」。「小声で」「叫んで」と強い演技を付けたのが原因だった(後で書きます)
- 最初は「10歳くらいの少女」の声を頼んだが、安全ポリシーで止められた。登場人物を20歳前後の女性に変えた
2回目:足あとをそろえた
- 足あとの形の手本を1枚の画像にして、足あとが映るカットに渡すと、形がそろった
- 今度は、恐竜が出てくる所で木が不自然に曲がって動く
3回目:木の動きと声を直した
- 「幹は曲がらない。揺れるのは枝と葉だけ」と書いて、木は直った
- 博士の声は、演技の指示を3通り試して、本人らしさを保ったまま緊迫感がいちばん出るものを選んだ
4回目:博士を変えて、最後の場面を足した
- 2人の見た目の画像を作って全カットに渡すと、服装が全カットでそろった
- ところが、恐竜が目の前を横切る、逃げる先に恐竜がいる、博士が食べられずに捕まっているだけ
5回目:縦型で作り直した(完成版)
- 恐竜は後ろから追いかけ、博士はひと飲みにされた
- それでも、助手が宙に浮いて見える、奥に別の恐竜がいる、など細かい所はおかしいまま
分かったこと
短いプロンプトだけでは、良い動画になりにくい
1回ごとに「それらしい映像」は出てきます。ただ、見るたびにおかしな所が見つかり、直すと別の所がおかしくなりました。文章の指示だけで、構図・動き・人物の位置を狙いどおりにするのは難しいというのが実感です。
お金がかかるのは映像。直すたびに1カット約126円
| 中身 | 本数 | 費用 |
|---|---|---|
| 映像(Veo 3.1 Fast・720p・8秒) | 16本 | 12.80ドル |
| 参照画像(足あと・人物) | 4枚 | 0.27ドル |
| 声(Gemini 3.8 Flash TTS) | 37本 | 0.03ドル |
| BGM(Lyria 3 Clip) | 1曲 | 0.04ドル |
出典:カツプロ調べ。映像は1秒0.10ドルで、8秒1本0.80ドル(約126円)です(Gemini API の料金ページ)。声は37本作っても約5円で、費用のほとんどは映像でした。
Gemini Developer API pricing | Gemini API | Google AI for DevelopersGemini Developer API Pricing
声は、日本語のイントネーションが自然
映像に比べて、声の出来はかなり良いと感じました。声は、2026年9月23日に出た最新の音声合成 Gemini 3.8 Flash TTS です(Google の公式ブログ)。
同じ声(自分の声の複製)を、これまでショート動画で使っていた有料の音声サービスと同じ台本で聞き比べたところ、本人の判定は「Gemini の方が自然なイントネーション」でした。9カットを文字起こしのAIにかけても、台本と違って聞き取られたのは2か所だけでした(カツプロ調べ)。聞き比べの音声は、こちらの記事で聞けます。
ショート動画の声を0円に|有料の声のクローン・Irodori-TTS・Gemini 3.8を聞き比べた
ただし、漢字の読みは間違えることがあります。今回は「博士」を「はかせ」と読ませるために、字幕は「博士」のまま、声には「はかせ」とひらがなで渡しました。
Gemini の音声合成は、前のモデル(2.5)のころは用意された声から選ぶだけで、自分で新しい声を作ることはできませんでした(以前の記事)。最新の 3.8 では、文章で説明して一から声を作る「声の設計」と、本人の声の複製ができるようになっています(Google の公式ブログ)。
演技を強くすると、複製した自分の声に聞こえなくなる
声の主が同じ人かを見分けるAIモデル(microsoft/wavlm-base-plus-sv)で、本人の録音との似ている度合いを測りました(1に近いほど本人。カツプロ調べ)。
| 博士のセリフ | 似ている度合い |
|---|---|
| 演技の指示なし(別の動画で使ったもの) | 0.970〜0.975 |
| 強い指示(小声・叫ぶ) | 0.614〜0.841 |
| 最後に選んだ指示(緊迫して、少し速めに、自然な声で) | 0.881〜0.915 |
「小声で」の1本は0.614で、別人(助手の声)の0.726より低くなりました。自分の声らしさを残すなら、演技の指示は控えめにするのがよさそうです。
安全ポリシーで止められることがある
- 「10歳くらいの少女」の声は作れなかった
- 逃げる場面で「怯えた(terrified)」と書くと映像が作られず、「家族向けの冒険映画の追いかけっこ」と書き直すと通った
- 止められた場合は、料金はかからなかった(Veo のドキュメント・実際の返答)
次からの手順:先に静止画を作って確かめる
今回いちばん費用がふくらんだのは、映像を作ってから「形が違う」「服が違う」「恐竜の位置が違う」と気づき、8秒ずつ作り直したことでした。
| 1回の費用 | |
|---|---|
| 静止画(Gemini 3.1 Flash Image) | 約0.067ドル(約11円) |
| 映像(Veo 3.1 Fast・8秒) | 0.80ドル(約126円) |
出典:カツプロ調べ(API 使用量の記録)
アニメーションを作るときと同じように、次の順番にすれば、直しの多くを静止画の段階で済ませられます。
- 登場人物と小道具の参照画像を作る(今回の4回目でやったこと。これで服装がそろった)
- 各カットの最初のコマを静止画で作る。構図・人物の位置・恐竜の位置を、ここで確かめて直す
- OK が出た静止画を、映像の最初のコマとして渡して動かす(Veo は最初と最後のコマを画像で指定できる・Veo のドキュメント)
今回のように「動かしてみたら違った」をくり返すより、ずっと安く、狙いに近いものが作れるはずです。
商用利用
2026年9月28日に、公式の規約とドキュメントで確かめました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作ったものの権利 | Google は、作ったものの所有権を主張しない。ただし、同じようなものがほかの人向けに作られることはある(Gemini API 追加利用規約) |
| 送った内容の扱い | 無料枠では Google の改善に使われる。有料枠では使われない(同規約)。Veo と Lyria には無料枠がない(料金ページ) |
| AIで作った印 | 映像にも声にも音楽にも、電子透かし SynthID が入る(Gemini API のドキュメント) |
| 著作権の確認 | 作った映像には、安全フィルタと、学習データを覚えて出していないかの確認がかかる(Veo のドキュメント) |
| 声の複製 | 本人が同意文を読んだ録音が必須。声が同じ人かを Google が照合する(Gemini API のドキュメント) |
| 禁止されていること | 人をだます目的で、開示せずに実在の人物になりすますこと(Google 生成 AI の使用禁止に関するポリシー) |
まとめると、作った映像・声・音楽は商用に使えます。ただし次の3つは、使う側の責任です。
- 特定の映画・キャラクターに似せない:タイトルの「旗が落ちてくる」演出は借りたが、色・字体・デザインはオリジナルにした(字体は SIL Open Font License の Dela Gothic One)
- 声を複製するのは、自分か、本人の許可をもらった人だけ
- 参照に使う画像の権利:他人の写真をそのまま渡さない。今回は、手本の写真の形だけを借りて、新しい画像を作ってから使った
YouTube に上げるときは、AIで作ったリアルな映像であることを申告しています。
まとめ
- Gemini API だけで、声・映像・音楽まで揃った短い映画風の動画が作れる
- 声(Gemini 3.8 Flash TTS)は日本語のイントネーションが自然で、37本作っても約5円。お金も手間もかかるのは映像
- ただし短いプロンプトだけでは、13.14ドル(約2,070円)かけても「まだこのくらい」。費用のほとんどは映像の作り直し
- もっと作り込んで、しかも安くするには、先に静止画を作って確かめてから動かす手順が必要
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この記事の著者・監修
カツ
カツプロ運営者のカツです! AI・Web関連から、日常のことなど、私目線の回答も交えながらお伝えします!
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